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病院選びについて

問い合わせのみも含めると計 6 件の病院 (漢方を除く) へかかりましたが、はるさんの場合は最後に L 病院にたどり着いて初めて症状の改善が見られました。

その他の 5 件の病院で原因の特定がなかなかできなかったこと、有効な処置が行えなかったことを責める気持ちは全くありません。動物病院の先生方は、人間の病院と異なり全科の病気に対応しなくてはならず、得手不得手があるはずです。全ての器官の病気を専門家と同じくらいの精度で対応するのは不可能です。

だからこそご家族がよくよくわんさんを観察して違和感に気づき、可能性のある病気をいち早く調べることが大事です。そしてとことんまで治療をすると決めたら、インターネットや同じ病気のわんさんのご家族などから情報を得て、経験と知識が豊富な先生を探してあげてください。
特に、中枢神経や循環器系など致命的になり得る病気に関しては、事前に評判のいい病院をいくつか探しておくと理想的かもしれません。

L 病院の院長先生であるはるさんの主治医の先生は神経に詳しい方で、脳炎の症例も既に何例も扱っており、中には順調な経過のわんさんもいます。
私の場合は経験も知識も豊富で人間性も素晴らしい先生とたまたま出会うことができましたが、後述の通り、病院は相性だと思います。私がお世話になった病院でもそれぞれの先生に個性がありました。


A 病院(2017 年 9 月 - )

食欲不振の症状が出た時にお世話になったのは近所の A 病院でした。
元気でおおらかな先生で質問もしやすかったので、病気の発症前まではワクチンや健康診断等で日常的にお世話になっていました。
ただ神経の症状についてはあまり詳しくなく、H 病院で斜頸を指摘されたことをきっかけに T 病院に CT を撮影しに行くまで、膵臓の病気を疑っていました。

口癖は「うちみたいな町医者は」でした。親身に話を聞いてくれて、情報も惜しみなく提供していただける先生でしたが、主体的に何かしていただけることが少なかったです。自分の知識や経験、持論よりも大学病院や専門性の高い病院の先生の指示を重視し、指示がなければ何もできません、来ていただいても無駄ということも良く言われました。
権威のある病院の先生と連携してきちんと対処してほしいという方とは相性がいいかもしれません。

H 病院(2017 年 12 月)

A 病院の前に何度かワクチン接種などでお世話になっていました。先生は朴訥とした方で恐らく知識もある先生だったのだと思います。少し質問しづらい雰囲気があったので主に A 病院へお世話になっていました。
A 病院が休診で点滴をしに行った際に、初めて斜頸を指摘してくれた先生でした。私には「斜頸」という言葉自体の認識がなく、「少し斜頸がある。傾いているね」と言われて「傾いているとどうなんですか?」と聞いたところ「傾いてるって言ってるんだよ!神経の検査した方がいいよ」と怒られてしまい、それ以降行くことがなくなりました。

T 病院(2017 年 12 月)

H 病院から斜頸を指摘されたことを A 病院に報告し、水頭症や神経の病気を疑うことになりました。A 病院には CT の設備がなかったので、CT のある T 病院へ行くことになりました。

A 病院の先生からも事前にご忠告いただき、インターネット上にも情報があったので覚悟はしていましたが、この病院の先生はなかなか強烈な先生でした。
ほぼいつでも怒りっぱなしで、病院のスタッフはもちろん、わんさんのご家族にも怒鳴ります。「生肉をあげていればいい、ペットフードやペット用のおやつをあげるなんて殺す気か」など、そこまでは動物を愛しているのかなと思えますが、「日本で初めて自分がイヌの開頭手術をした、他の病院へ行ったあんたはバカだ、論文を発表している医者はろくでもない」そういった病気とも関係ない罵声を診察中ずっと浴びなくてはいけません。診察室のドアは開けっ放しで他のお客さんにも丸聞こえですが、ほとんどが常連さんなので、みなさんいつものことと和やかな表情です。

診断は後日、検査機関で MRI を撮って行いましたが、延髄、橋と小脳に病変があること以外は分かりませんでした。脳脊髄液に血液が混ざっていたため検査が一切できないと大変ご立腹で、ご自分が紹介した提携機関なのでそれならば何かしら文句を言ったり返金を要求してくれたりするのかなと思いましたが、私たちが怒鳴られただけでした。はるさんがせっかく頑張ってくれて取れた脊髄液でしたので、持って行き場のない悲しみと申し訳なさが残りました。
後でわかりましたが、はるさんのような小型犬の場合は脳脊髄液に血液が混入してしまうケースが一定数あり、その場合でも白血球数や抗アストロサイト自己抗体の検査は可能です。

脳炎の治療は少し特殊で、はるさんのプレドニゾロンの効きが悪いと見ると、通常クッシング症候群等の検査に使う ACTH という薬剤を注射し、副腎のコルチゾールの分泌を促進させるという治療でした。あまり効果はなく、何度か通ったのですが、結局それ以外できることはないとのことで、大学病院の診察を受けることになりました。

「念の為に大学病院の意見も仰ぎたいので、T 病院で撮った CT や血液検査の結果などを提供して貰いたい」とお願いしたところ、笑顔ともつかない歪んだ表情で「あんなやつらみたいなところに行くなんてあんたはバカだ、冗談じゃない、俺より詳しい医者なんていない、バカばっかりだ、あんたは何も分かっていない」と大声で怒鳴られました。各検査結果は、気の毒に思ってくださったのかスタッフの方が淡々と用意してくださいました。先日久しぶりにその時に録音しておいた音源を聞いてみましたが、今なら笑うことができても、当時はやはり衝撃的だったことを思い出しました。

この病院はいつも混んでいて、インターネットではゴットハンドと呼ばれており、ものすごく評価も高いです。今思うと、恐らく外科治療が得意な先生だったのだと思います。椎間板ヘルニアの手術が早くて手術痕がキレイという評判をよく見かけました。
私にはよく分かりませんでしたが、きっとある種の人にはカリスマのような魅力のある人なのだろうなと思います。待合室で遠方から来ているおばあちゃんが、「歩けなくなったのを手術ですごく早く治してくれて、いつもバシッと診断してくれるのよ。それをハイハイって聞くの」と嬉しそうに話していましたが、そういうことなのだと思います。

病気についてはなんだか難しいから理解しなくていい、自分では判断も難しいからそういうことは専門であるお医者さんの言うとおりにしておくのが一番いい、もし助からなくてもそれが最善の方法だったと諦められるという方には相性のいい先生なのだと思います。

大学病院 (2018 年 3 月)

結局 T 病院からは紹介してもらえず、A 病院にお願いしてから 2 週間後に大学病院を受診することができました。
その間にも、はるさんの容態はどんどん悪くなっていきました。

事前に撮った MRI の画像から 9 割方肉芽腫性髄膜脳脊髄炎 (GME) という診断で、薬で寛解に持ち込めるのではとのことでした。免疫抑制剤のシクロスポリン(アトピカ)を追加し 1 ヶ月様子を見ることになりました。

免疫抑制剤は血中濃度が一定になるまで継続的に薬を飲んで初めて効果が発現するため、ある程度時間がかかることは分かっていたのですが、シクロスポリンの服用後 5 日経っても症状は一向に改善せず悪化し続けました。大学病院の予約は 1 ヶ月先でしたが、担当の先生へは電話で問い合わせができたため、何かできることはないかと聞いてみました。下痢が続いていたため、服用薬の吸収率の低さを考えてプレドニゾロンの注射はどうかと聞いたところ、それくらいしかできませんねという回答でした。

対応していただいた先生はとても説明が丁寧でしたし、病院自体も脳炎の研究していた有名な先生が在籍していた(私が受診した時には既に退職されていました)ところだったので、その診断や治療法には一定の信頼が置けるだろうと思っていました。なので、ここでもう打つ手がないとなるといよいよなのかなと諦めかけました。

K 病院 (2018 年 3 月)

この病院は隣県にあり、脳炎に関する複数の免疫抑制剤の情報がホームページに掲載されていました。プレドニゾロンが全く効かないため、他の免疫抑制剤で試せるものがないかと思いお電話しました。院長先生が丁寧に対応してくださったのですが、来ていただいても標準的な治療しかできず、大学病院の先生の指示に従ったほうがいいとのことで、実際にお伺いすることはありませんでした。

L 病院 (2018 年 3 月)

3 月の初旬に脳炎のわんさんのブログからたどり病院のホームページを見つけました。

最初に T 先生と電話で会話した時の印象はよく覚えています。病院のホームページを見つけた段階で今までの経緯をメールで送らせていただいており、それ以降の症状を電話口で簡単に説明したのですが、その声からは今までお世話になった全てのお医者様から感じた諦めの雰囲気が一切感じられませんでした。とりえあえず画像と症状を見てくれるとのことで、その日の夕方に伺うことになりました。

この先生は私の獣医さんの概念を悉く覆しました。多少ベタ褒めの傾向になりますが、私にとってはそれまで誰も助けてくれなかったはるさんを救うという偉業を成し遂げてくれたヒーローですので、どうかご容赦ください。

T 先生はご自身の経験から得られた統計や独自の治療法をたくさんお持ちでした。とにかく引き出しが多く、何かの症状を相談するとほとんどのケースで納得できる説明と対処法を模索してくれます。他の病院ではこれ以上できることはないとされたはるさんの治療も、今の治療法で効果なかった場合はこれ、その次はこれと当初から何ステップも治療計画が頭にありました。はるさんが生きるためにまだそんなにできることがあったのかと感じた時の嬉しさは表しきれません。

はるさんの今までの経緯を伝えても、「大学病院の先生が言うなら」というような反応は一切ありませんでした。これは本当にすごいことです。命という重いものを扱う職業だからこそ、責任を追わずに済む方法を無意識に選択してしまうことは普通だと思います。通常は、責任を逃れるために一般的な治療からはみ出すのを嫌がります。
先生は自分で経験した症例のデータを地道に集め、それに基づいた仮説を立て、時にそれが一般的もしくは著名な方の理論と異なっても自分を信じて臆することなく実行します。これは地位や責任云々を重視する先生には難しいことで、それよりもわんさんを助けることが獣医の仕事というプライドと信念がないとできないことです。

はるさんは何度も命の危機を迎えました。T 先生は慌てふためいてはるさんを運んでくる私たちに一歩も引かず、いつも冷静さと情熱を持ってはるさんの治療にあたってくれました。それははるさんが亡くなった日まで変わりませんでした。
はるさんが少しでも長く健康に生きるにはどうすればいいか、恐らく治療の時はそれしか考えてないのだと思います。はるさんが生きるか死ぬかという時、そう遠くない未来に死ぬという事実、そこから逃げない先生の姿勢がいつもどんなに心強かったか分かりません。これも日々それぞれの患者さんの命に対して妥協なく誠実に接していなければできることではありません。

治療や病気に関して一切の嘘はありませんが、常にわんさんの家族の気持ちも考えてくれる先生でした。技術的には真実を追う一方で、常に私たちの選択が間違いではないと思わせてくれました。
例えば L 病院に来るまでの対応や、各種薬の減薬に関して言いたいこともあったと思いますが、私は先生から何ひとつ責められたことはありません。いつも何も言わずはるさんを助けるためだけに全力を尽くしてくれました。恐らくそれによってわんさんの家族が後々まで自分を責めることを防ぎたいのではないかなと思います。
こちらが他の病院や先生について不平不満を溢しても T 先生が同調するようなことは一切なかったので、もともと色々な方の諸事情を慮れる方なんだと思います。

はるさんの病気自体が重かったことと、私が病院から少し遠い場所に住んでいたこともあっての特別対応でしたが、常に先生と連絡が取れるようにもしてくださいました。
初診から数日後の受診後、はるさんの様子を心配し、帰宅した頃にお電話をいただいたことには本当にびっくりしましたが、その後もはるさんの歩行の動画などをなんと半年間ほど毎日のように送って見ていただいたり、体調を崩して受診した日の夜にはどうですかと連絡をくださったり、体調による薬の種類や量の変更、救急病院などでの処置の指示、塞ぎがちな時の他愛のない会話まで、昼夜を問わず返信をくださいました。普通は手の届かなくて済むところまで責任を取ろうとするその姿勢に、大丈夫なんでしょうかと逆に心配になります。

まだ自宅で注射を打っていなかった時期にも、はるさんの体調がみるみる落ちたその日の夜中に、病院においでと嫌な顔ひとつせず対応していただいたことも何度もありました。
はるさんが重積発作を起こした時は、私たちが看病でほとんど眠れていないことを考慮していただいて、高速で片道 1 時間かけて自宅まで来ていただきました。

はるさんが亡くなった後にも、はるさんの遺骨を欲しいと仰ってくださいました。まさに私たち家族と一緒に脳炎と闘ってくれた T 先生に、はるさんの骨を持っていてもらえることはとても嬉しいことでした。遺骨を渡しにご挨拶に伺った際、私たちのペットロスを心配して、はるさんが亡くなったお部屋で 3 時間ほど病院の診療時間外に時間を割いて次のわんさんの話をしてくださったり(笑)、その後も大丈夫ですかとご連絡いただきました。

書いていてアレですが、そんな獣医さんいるのでしょうか。。
はるさんが導いてくれた縁です。素晴らしい獣医さんと出会えて、一緒に闘ってくれたことは一生忘れられません。きっとまたお会いできると思います。

ちなみに T 先生は話好きで、診察時は病気についての話をたくさんしてくれます。病院はいつも大混雑なので、よくスタッフの方に怒られてはニヤニヤしています。いい先生です。


コメント

Unknown さんの投稿…
はじめまして。
わが家の愛犬(マルチーズ4歳女の子)も現在脳炎闘病中です。
こちらのサイトはとても分かりやすく参考にさせて頂いております。
可愛い可愛いはる君、いっぱい頑張りましたね。
見守るご家族のお気持ちも痛い程伝わり、本当にこの病気が不治の病ではなくなる日を願うばかりです。

脳炎に詳しい獣医師ともなかなか出会えず、はる君を診ていただいた病院を教えていただく事は可能でしょうか?
我家は神奈川県横浜市在中です。
かかりつけ医は発作が起きる度に面倒な厄介な患者…といった態度で今後一生寄り添っていただけるとは思えないため現在より良い病院を探しております。

もし可能であればよろしくお願いいたします。

佐藤
Haru@0327 さんの投稿…
佐藤さま、こんにちは。
温かいお言葉とともにコメントいただき、ありがとうございます。

愛犬のマルチーズさん、発作もあるのとことで、佐藤さまのお気持ちを考えると胸が痛くなります。
病気の子のお世話中はしっかりしなきゃと気を張ってしまうこともあるかと思いますが、どうかご無理なさらないようにお気を付けてくださいね。

お世話になっていた獣医さんは土岐政晴先生という方で、ブログに載せていいよとお許しをいただいたのを忘れて更新しておりませんでした。
はるさんと一緒に行っていた病院をこの6月に辞められまして、来月2021年8月2日から調布市でご自身の動物病院を開院されるそうです。

トキ動物病院
https://toki-ah.net/

ブログに記載した通り、しっかり受け止めてくれる先生です。
病院までの距離は我が家と同じくらいかと思いますので、ぜひ一度ご相談してみてください。

佐藤さまが今より少しでも前向きに、少しでも穏やかに、マルチーズさんと過ごせる日が続きますように願っております。
きっとマルチーズさんは可愛いに違いありません。応援しておりますので、何かありましたらまたご遠慮なくお声掛けくださいね。
Unknown さんの投稿…
早々にご返信ありがとうございます。

先生は調布市で開業されるのですね。
是非相談に伺いたいと思います。

約ひと月前に危険な状態になり一命は取り留めましたが、現在の投薬では副作用が心配ですので薬の調合に詳しい診ていただきたいと思って日々模索中です。
かかりつけ医に相談しても「減らすと発作が起きるから生かすためには仕方がないでしょ」と言われ…全く親身になってくれませんでした。

話は違いますが…記載のT病院に以前診て頂いた事があり、そうそうとうなずきながら拝見しました。当時飼っていたマルチーズが高齢で心臓病を患い、怖いけれど腕は良いとの評判で診ていただきましたが結果たった一ヶ月2回の通院で旅立たせてしまいました。詳細はふせますが病院選びを間違えて7年経った今でも後悔で逝ってしまった子の事を思わない日はありません。

長々とすみません。

今できる限りの事を愛犬にはしてあげたいと思います。

今後とも参考にさせていただきます。
Haru@0327 さんの投稿…
ありがとうございます。

以前T病院に行かれたことがあるのですね!独特なので、やはり分かる方には分かってしまいますね笑

脳炎についての理解が浅い頃にお世話になったので、言われるがままあまり意味のない筋肉注射ではるさんに毎日痛い思いをさせてしまったこと、その数週間の間に加速度的に症状が進行してしまったことは、やはり後悔として残っています。
お世話に関してはあまり後悔はないのですが、やはり一番大きな後悔は、納得できる治療を開始するまでに時間がかかったことです。


減薬は本当に難しいですよね。
はるさんの場合は、土岐先生もあまりお勧めしない中での敢行でしたが、それでも出来る限りのサポートをしていただきました。

ブログにも書いたかもしれませんが、他の脳炎のわんさんの経過を見ても、薬で寛解に持ち込めるのは最初に低容量の薬で症状が治まる子たちなのだろうなとは感じます。それでもやはり、脳炎の治療の開始はスピード勝負であり、出来る限り負担を減らして、少しでも長く一緒にいたい気持ちは同じだと思いますので、佐藤さまがより早く最良の治療に辿り着けるように願っております。

マルチーズさんはきっと既にとても幸せだと思いますが、佐藤さまにとっても、辛いながらもなるべく幸せな時間になりますように。

またお力になれそうなことがありましたら、是非ご連絡ください。