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漢方と減薬について

始めるタイミングについて

はるさんが脳炎の診断を受けた時に我が家でも漢方を検討しましたが、東洋医学への信頼が薄かったこと、効き始めるまでに時間がかかること、当初はそもそもごはんも食べてくれなかったため難しいということで一旦見送った経緯がありました。

はるさんが漢方専門の病院で処方してもらった漢方を服用し始めたのは、発症から 1 年半後、主治医の先生に勧められてからでした。今から振り返ると、発症から 7 ヶ月後に一度とても元気になったタイミングで漢方を始めるべきだったと思います。

お世話になっていた漢方の病院の SNS などを見ると、特定の免疫系の疾患や身体全体の状態の向上にはとても有効なようですので、もしご自身のわんさんが免疫系の病気を患っている場合は早めに試してあげてみて欲しいと思います。

種類について

はるさんが服用していた漢方は下記の通りです。(オリジナルの処方とのことなので、名称は控えます)

- 免疫力をあげる粉薬
- 炎症を抑える錠剤
- 肝臓の働きを良くする錠剤 (胆汁の流れを良くする)
- 腎臓を温める錠剤
- 神経を強くする錠剤

副作用について

はるさんに処方していただいていた漢方の殆どは副作用はないとのことでしたが、1 つだけ、炎症を抑える錠剤については下痢や粘膜便、血便などが出ることがあり、それが炎症を外に排出していることを示しているとのことでした。
ただ普通に考えると、その状態は腸がきちんと機能していないとも捉えられ、服用している他の薬の吸収が悪くなるとも考えられます。

実際粘膜便の時は調子が良いことが多かったので真偽は不明ですが、脳炎の子は薬の吸収が命だったりもしますので、どうぞしっかり観察して気をつけてあげてください。

食べさせ方

幸いなことにはるさんは漢方を喜んで食べてくれましたので、食べてくれなくて困るということはありませんでした。

錠剤はお肉に巻いたりバナナなどのペースト状のおやつと一緒に食べてくれました。
粉は最初に漢方の先生に教えていただいた通り、ヨーグルトに混ぜてあげてみたのですが、はるさんはヨーグルト自体がそんなに好きではなく、舌も動かないので食べにくい様子でした。それでも最初のうちは粉も 3g 程度だったのでまだ大丈夫だったのですが、それを超えてくると粉とヨーグルトの量が大量でとても食べられません。はるさんの場合は嚥下機能も心配でした。

最終的に、粉の量の 1 - 2 割程度の少量のヨーグルトに粉を混ぜて食べやすいサイズに丸め、ペースト状のごはんを付けて 1 つ 1 つ与えることで快適に食べてくれるようになりました。粉 5g で 20 粒ほど、はるさんは 1 日 20g を食べていたので 80 - 100 個ほどを食べていました。

丸め方は下記のサイトも参考になるかもしれません。他にも鶏肉ペーストをまぜて焼いたりする方法も見かけました。(おくすりちょーだいは我が家では別の粉サプリを丸めるのに役に立ちました。)
https://sippo.asahi.com/article/11702336
https://harupetskobe.blogspot.com/2018/05/

量について

錠剤に関しては 1 日に 1 - 3 回、粉は前述の通り 1 日 20g を食べていました。

我が家がお世話になった漢方の病院は、なるべく早い時期に、なるべく多い量の漢方を食べさせることが重要という方針でした。

るさんの場合は高用量のプレドニゾロンを始めてから 1 年 2 ヶ月が経過しており、すでに代謝障害が出ていて体重が減り始めていた頃でした。そのせいか、亡くなるまでの 7 ヶ月間は癌の子が食べるという量のほぼ 4 倍の漢方を毎日食べてくれていましたが、残念ながらほとんどプレドニゾロンの減薬はできず、そこまで目に見えて大きな効果はありませんでした。

減薬について

病院の方針にも依りますが、基本的には漢方を導入することでステロイドや免疫抑制剤の減薬もしくは中止を目指します。

漢方を始める前から分かってはいましたが、西洋薬を減らしたい東洋医学と、はるさんの症状では安易に薬を減らせないと判断する西洋医学は時に真っ向から対立しがちです。もちろんその時のはるさんの体調を見つつ判断しようとは思っていましたが、はるさんしか脳炎の経験がない飼い主が、医学的な知識もほぼないまま決断しなくてはいけないことはやはり難しいことでした。

まずその時に服用していた 30 種類以上の薬とサプリの一覧を漢方の先生に提示し、漢方と置き換えられるものを中止することになりました。金銭的な負担を軽くすることも 1 つの目的ですが、東洋医学では身体を温めることが大事であり、西洋の薬は身体を冷やすためなるべく与えないほうがいいという考え方でした。

減薬もしくは中止した薬、サプリは下記です。
肝臓系の薬、サプリ:

それまでにたくさん服用していた肝臓の薬やサプリのほとんどを中止し、漢方の錠剤 1 つと置き換えることになりました。
既に代謝障害が起きていたため、肝臓系の薬は意味がないのかもと思ったこともあります。

その後の血液検査では肝臓の数値が大幅に悪くなることはありませんでしたが、QOL の観点から考えると、特に副作用があるわけでもなかったので止めるべきではなかったなと思います。

プレドニゾロン:

漢方の服用開始 1 ヶ月後からプレドニゾロンの減薬を何度か行ったのですが、発作が頻発してしまいました。
一旦免疫抑制剤の減薬にシフトし、終わった後に再度プレドニゾロンの漸減に挑戦しましたがほとんど減らすことができないまま、プレドニゾロンの副作用により亡くなってしまいました。

あの時に選択肢があったかどうか分かりませんが、結果から考えるとプレドニゾロンの減薬を免疫抑制剤の減薬より優先していたら、もう少し元気でいてくれたのかもしれないなと思います。

免疫抑制剤(服用薬):

最初のプレドニゾロン減薬の不調からなんとか持ち直して落ち着いたタイミングで、プレドニゾロンではなく免疫抑制剤を先に減らすことになりました。免疫抑制剤が漢方の免疫を上げる作用に反しているためとのことでした。

免疫抑制剤は通常、プレドニゾロンなどで強力に抑え込んだ免疫細胞の働きをゆったり持続的に抑える目的で服用します。

この免疫抑制剤は重篤な副作用も少なく、プレドニゾロンだけでは抑えきれなかったはるさんの脳炎を抑えてくれた相性のいい大切な薬でした。

今もこの薬を止めた選択を後悔してはいないのですが、これを飲んでいては漢方をいくら飲んでも意味がないと言われてしまい、減らさざるを得ない状況ではありました。

結果的には様子を見つつ 3 ヶ月かけてオフになり、亡くなるまでの間にそこまで大きな影響はありませんでしたが(脚の動きが悪くなったりはありましたが関係は不明です)、残念ながら漢方の効果が強まることもなかったように思います。

ゾニサミド:

はるさんのてんかん発作は炎症由来で、5 種類飲んでいた抗てんかん薬はどれも効いていないように感じていました。

てんかん発作は漢方でカバーできる領域ではないため、抗てんかん薬については漢方に置き換えられないとのことでしたが、一般的に副作用が少ないとされるゾニサミドは副腎に良くないとのことで、発作の頻度が変わらないなら減薬してみましょうということになりました。

3 週間ほどかけてオフになり、特に発作の頻度への影響はありませんでした。


減薬の影響について

プレドニゾロンの減薬の影響はその日の夜か翌日に出ることが多かったです。
抗てんかん薬は減量/中止の時はもちろん、開始時にも発作が増えることがあります。影響は即日に出ることが多かったです。


漢方、東洋医学への心積もりについて

以下は少しお目汚しになるかもしれませんので、病院批判が不快な方は読むことをお控えください。

我が家がお世話になった漢方の病院は、都内であればここかもう 1 つくらいしかないくらい有名なところです。担当の先生によっても異なるのかもしれませんが、こういった対応もあるという参考のために記載しておきます。

東洋医学全般に言えることかもしれませんが、服用する漢方の作用機序はとても論理的に納得できるものではありません。
服用させる薬の作用機序に少しでも納得してから与えることに慣れてきていたため、よく分からない成分のものをはるさんに与えることに少し抵抗を感じましたが、いずれにしても西洋医学ではこれ以上はるさんの身体機能を維持できそうにありません。とにかくやってみてから様子を見ようという精神で始めることになりました。

例えばメインの漢方である免疫力をあげる粉薬についての説明は、異常に反応してしまう免疫機能を抑える対症療法にしかならない西洋医学に対し、東洋治療ではその異常な免疫機能を抑える免疫機構 (サプレッサー T 細胞などのことでしょうか) の力をあげることで免疫のバランスを整えるというものでした。どうやってサプレッサー T 細胞を活性化するのかの説明は得られませんでした。

また、はるさんには各種神経症状の他にもてんかん発作や不規則な呼吸、鼻詰まりなど色々な症状がありました。主治医の先生は本当に引き出しの多い方でしたので、相談すると「こういった原因が考えられるのでこのように作用することが期待されるこの薬を試してみよう」という返事をいただけますが、漢方の先生の返答はいつも粉薬一本で、「免疫をあげるためにしっかり粉薬を飲ませてください」という回答でした。粉薬は飲ませ過ぎなほど飲ませていましたので、そのうちこういった相談をすることもなくなりました。

こういった対応は、免疫系の病気に関して西洋医学は主に対症療法、東洋医学は根本治療を目指すものという違いがあるためと理解しています。東洋医学では推測した原因から治療するという考え方はありません。過去ではなく今の状態がどうかが大事であり、身体の特定の病変へのアプローチというよりは身体全体の機能の向上が目的です。頭では理解できますが、根拠となる説明が曖昧で、かつ実際に期待される結果が出ないこともあり、心情的には不信感に繋がる理由の 1 つになりました。


それ以外にも、漢方の先生の対応や経験値に対して信頼できないこともありました。
処方されていた漢方のうち炎症を抑える錠剤に関しては、下痢や粘膜便、血便が出ることがあるとのことで、はるさんの体調を判断するのに便の写真を送って欲しいと言われていました。免疫抑制剤の注射の効果が切れてくるタイミングや、プレドニゾロンの減量時などはこの炎症を抑える錠剤を増やしたりしていたので、通常の便のときもあれば、激しい下痢、粘膜弁、血便のときもあります。はるさんの症状の報告と併せて写真を送っていたのですが、いつも返ってくる返事は「いいですね」でした。
こちらもやはりそのうちに、写真も報告も送ることがなくなりました。

残念ながら私のお世話になった漢方の先生は、はるさんほどの経過の長い、かつ激しい脳炎の子を経験したことがありませんでした。そのためか、その他の例えば皮膚の炎症等と同じように、漢方を服用し始めてから遅くとも 1 ヶ月位からプレドニゾロンの減薬が可能ですと自信を持って仰っていました。
経験がないのに自信たっぷりに減薬を約束することにも違和感がありましたが、やはりプレドニゾロンの減薬は成功しませんでした。減薬方法についても特に細かい指示はいただけず、万事こちらが具体的に提案すると肯定するといった印象でした。

最初の減薬で具合が悪くなった際にも病状や減薬について逐次相談していたのですが、減薬によって生じた脳炎やてんかん発作に関しては主治医の先生に相談して対処してくださいとのことだったので、いつも通り主治医の先生に対応していただき、時間をかけてやっと落ち着くことになりました。
西洋薬は良くないので減薬はする、だけどその方法とその後のことは知らないという態度に見えてしまい、これも不信感が募る原因となりました。

はるさんにとって体調を崩すことがどれほど致命的なのかを私が伝え切れていなかったのかもしれませんが、経験がない症例に対して減薬を軽く考えているようにも見えました。院長先生とも相談しながら対応してくださっていたと伺っていたため、これは担当の先生の問題ではなく、病院全体がそのような対応なのかなと感じてしまいます。

はるさんの状態を実際に対面で確認するのも最初だけでした。詳しい経過についても特に興味がないように感じました。確かに何がどうあれ案内するのは粉薬しかないのですから、詳しい経緯を知る必要も、その子の症状に合わせて処方する必要もありません。


前述の通り、漢方の理念は理解できます。実際に効果的な症例もありますし、漢方薬そのものに不信感があるわけではありません。ただ理屈で納得ができないものを提供するのなら、病院側にはせめてその不安を払拭する程度の経験や対応を提供する努力も必要だと思います。
今回担当していただいた漢方の先生と病院に関しては終始不信感が募る一方でした。亡くなったことを報告した際にいただいた言葉も、とてもその言葉に見合った質量を感じられるものではありませんでした。

もしはるさんの主治医の先生が東洋医学を完全に否定したり、自分以外の診断や方針を認めない獣医さんだったら、私たちは誰にも相談できず完全に孤立することになっていたと思います。自分が減薬を推奨していない状況で減薬を始め、想定通り体調を崩し治療をお願いしに来る私たちを、一切責めることもなく全力で対応してくれました。はるさんが亡くなってから改めて感じることになりますが、主治医の先生は最初から最後まで私たち家族の気持ちを考慮してくださっていて、それに何度も救われました。

付け加えておきますが、その漢方の病院の SNS なども見るときちんとデータなどを公表されていたり、対症療法的に漢方を処方していたりもするようですので、一概に同じ対応にはならないかもしれません。

病院選びにも通じますが、できるだけ双方の治療に深い知識と理解のある先生が増えるといいなと思います。


コメント

Unknown さんの投稿…
はじめまして
我が家のワンちゃんも昨年9月ぐらいに壊死性脳炎になり今治療中です。
免疫抑制剤とステロイドを飲み昨年12
月に漢方薬をはじめ今免疫抑制剤の減薬をはじめました。
私は麻布にあるハルペッツクリニックに行きましたが、どこの漢方薬の病院か教えて下さい
Haru@0327 さんの投稿…
初めまして。コメントありがとうございます。
同じ壊死性脳炎と診断されたのですね…。

我が家も同じく西麻布のハルペッツさんにお世話になりました。
ほしのどうぶつクリニックの星野先生にも漢方のセカンドオピニオンとして相談させていただいたのですが、その際には遠方とご多忙ということで残念ながらお会いできず、ご紹介いただいた先生に鍼治療のみ施術していただきました。

私が当時調べてみた際には、上記の2人の先生以外の情報は得られませんでした。
もしご縁と必要性があれば、星野先生にもご相談いただくのもいいかもしれません。

ご家族様も大変かと思いますので、どうぞご自愛ください。
辛い思いをしているわんさんが、どうか少しでもいい状態になるように願っています。